「お客様とコミュニケーションはうまく取れるのですが、本心を話してもらえていない様な気がします。」
生命保険を提案する場合、ご家族構成や将来の展望など、事細かにヒアリングし、プロファイリングすることが必要です。
最終的にご提案するプランが他の人と同じであっても、その保険がどのような場面で、お客様のどのような役に立つのかをイメージいただかなければ成約には至りません。そのためにも、まずはお客様の「本心」を本音で話していただくことが大切です。では、本音を引き出す方法、「カタルシス効果」をみていきましょう。
もくじ
苦痛を緩和する
「カタルシス効果」とは、不安や不満などのネガティブな感情を口に出すと、苦痛が緩和されて安心感を得られる効果のことです。
カタルシス効果
マイナスの感情を口に出すことで、苦痛が緩和されて安心感を得られる効果のこと
「カタルシス」とはギリシャ語で「浄化」を意味しますが、哲学者のアリストテレスが自著「詩学」において、「心の浄化」との意味で用いたことから、「心の浄化」を現わす様になりました。 「カタルシス効果」は、映画を観て主人公に共感して泣いてしまった時や、誰かに悩みを打ち明けた時などに効果を実感できます。
要するに、「心が浄化された」と感じるわけです。皆さんも悲しい出来事や、不安に思っていることを誰かに話すことで「スッキリした」、こんな経験があるはずです。
なぜ「スッキリ」するかと言うと、人には自分のことを話すことで、脳の快楽レベルが上がっていく習性があるからです。また、脳の快楽レベルが上がることで、話をしている相手に好意を寄せる様にもなります。
カウンセラーになる
お客様と初めてお会いした際は、まだ全く信頼関係ができていないので、まずはラポールを築いて距離を縮めます。そして距離が縮まってきたと感じたら、この「カタルシス効果」を活用します。
お客様の悩みや不安をしっかりと聞くことで、普段抱えているネガティブな感情を口から吐き出してもらいましょう。同意や同調を繰り返すことで、お客様は次第に心を開き、「このセールスなら信頼できる」と思うようになります。
以前、ある女性にご主人の死亡保障のお話しをした時、「実は離婚を考えている」とカミングアウトされたことがあります。それまで、ご主人が万一亡くなった際のその後のお客様とお子様の生活費の話しをしていたのですが、離婚するかもしれないと伺い、ご主人ではなくお客様に万一があった際の提案に切り替えました。そして最後にこんな言葉をいただきました。
保険に加入することで、吹っ切れました!離婚する覚悟と同時に頑張ろうという気持ちになりました。
この様に、お客様から本音を聞き出せていなかったら、提案内容がお客様の本来のニーズから外れてしまうこともあり得ます。 では、お客様と真に打ち解けるには、どうすればいいのでしょうか?
お客様に「今日は本音でお話ししてください!」と言っても、本音で話してくれることはありません。そこで、お客様の本音を引き出す方法を見ていきましょう。
❶ 表情や行動の違いに着目
最初にお会いした日の、お客様に対して感じた印象をしっかりと覚えておきましょう。
次にお会いした際に、お客様の顔が疲れていたり、何か思い詰めている様な表情をしていたら、その気づきを伝えます。
あちらから歩かれてくる時に、以前より少し疲れているように見えましたが何かありましたか?
こんな感じです。杞憂という事もあるかもしれませんが、図星だった場合、お客様が本音をお話ししてくださるかもしれません。人は「疲れた顔」をしていますねと言われると素直に受け取ることができません。自分が他の人と比べて、疲れた顔をしているのかと思ってしまうからです。
しかし、前回会ったときと比較されるのであれば、前回の自分より疲れていることは素直に認められます。このように誰かと比較した結果ではなく、お客様の過去の表情や行動の違いに言及すれば、受け入れてもらえるのです。
❷ 縦パスを入れる
次に質問の仕方を変えてみましょう。
お客様と人間関係を構築するためには「ラポールを築く」ことが大切でした。バックトラッキングを活用して、お客様がお話しされたことを繰り返すことが大切です。
初めてお会いしたお客様にラポールで距離を縮めます。
しかし、ただひたすらお客様のいう事を繰り返していても、本音を聞き出すことはできません。
例えば、サッカーで勝利を目指すとき、「横パス」だけではゴールは決まりません。時には鋭い「縦パス」が必要なのです。この「縦パス」こそ、上辺の関係性を突き破る質問です。
そこで、例えば次の様な「縦パス」質問をしてみてください。
そのとき、どのようにお感じになったのですか?
どうしてそのような行動を取られたのですか?
この質問は、お客様の行動の元となった過去の経験や価値観を伺うことができます。
例えばもしお客様が「今、プロジェクトで孤立している」と感じているのであれば、過去に孤立した経験があり、同じような兆候を感じているという可能性もあります。この様な「縦パス」質問で、お客様の過去の歴史や出来事を聞くことができます。より深い関係性を築くことができるのです。
❸ 受け入れる
そして質問に対する意見を伺った後で大切なことは、お客様の考えに肯定も否定もしないことです。私たちの意見を押し付けたり誘導したりはしません。
ときにはお客様の考え方において、「それは間違っている」と感じることもあるかもしれません。しかし、あくまでお客様が感じたこととして素直に受け取り、お客様の気持ちに寄り添いましょう。受け入れるのです。
ジャストフィットする提案へ
このようにラポールで表面的な人間関係を築いた後は、さらに深い関係を築ける様に「カタルシス効果」を意識して、お客様の心理に迫りましょう。
お客様の「本音」を聞き出せなければ、ジャストフィットした提案はできません。着心地の悪い提案になってしまいます。そして、その着心地の悪い提案ではクロージングまでいったとしても、最終的に成約には至りません。
ニーズ確認はとても繊細なプロセスであり、その後の成約を左右する分岐点です。「カタルシス効果」を意識して、より深みのある提案にしてください。