「保険の様々な機能を、お客様がなかなか理解してくれません。」
生命保険には、メインの保障に加えて様々な保障がついています。しかし、たくさんの保障がついていればついているほど、お客様にとっては安心の材料が増えるにも関わらず、内容を理解して、覚えておいていただくことが難しくなります。
「保険金」というのは、受取れる状態に該当した場合、保険会社に請求しないと支払われません。ということは、どんな状態になったらどんな「保険金」が受取れるのか、それをお客様に理解して、覚えていただいておく必要があります。
例えば「高度障害保険金」や、「リビングニーズ特約」をお客様に説明する際、どうお伝えしていますか?この様に、機能だけ淡々とお伝えしていませんか?
高度障害保険金
両目が見えなくなったり、両足が動かなくなった際に、高度障害保険金をお支払いします。
リビングニーズ特約
余命6カ月と宣告されたら、その時点で3,000万円を上限に死亡保険金をお支払いします。
説明としては間違っていませんが、大事なポイントが抜けています。頭に残らないし、つまらないのです。
プレゼンテーションで大事なことは、「お客様の記憶に残すこと」です。お客様の記憶に残っていなければ、保険金を請求することができず、せっかくの保障が無駄になってしまうのです。
それではどうやって伝えれば、お客様の頭に残るのでしょうか。そこで「機能的固着」について考えてみましょう。
もくじ
固定観念に囚われてしまう
機能的固着
物の「機能」に「固着」するあまり、その他の「機能」に気付かなくなる
「機能的固着」とは、その物の一般的な「機能」に固着するあまり、他の用途にも使えることに気が付かないことをいいます。
紐を使った実験
被験者が部屋に通されます。そこには2本の「紐」が天井からぶら下がっています。両手を伸ばしても、2本の「紐」を同時に掴むことはできません。部屋の隅には、「椅子」「白い紙が2枚」「ペンチ」があります。
この状況で、「2本の紐を同時に掴んでください」というお題が出されます。これらの道具を使って、2本の「紐」を同時に掴むことはできるでしょうか?
この実験では、ほとんどの被験者がまず「椅子」を手に取りました。「紐」が上からぶら下がっているから、「椅子」に乗れば何か解決するのではと感じたのでしょうか。しかし、「椅子」では解決しません。
2本の「紐」を同時に掴むには、「ペンチ」を使用するのです。片方の紐に「ペンチ」を結び、振り子の様にして片方の「紐」を振ります。もう片方の「紐」を掴みながら、その振った「紐」をキャッチする、そうすることで2本の「紐」を同時に掴むことができます。
これが「機能的固着」です。
「ペンチ」は通常、物を挟むものなので、「紐」に括り付けて「おもり」にするという発想が浮かびません。このように、過去の経験が足かせとなることで、その他の「機能」に気付くことができないのです。
自分自身も…
私も以前、こんな経験をしたことがあります。
家でケガをしてしまい、消毒液を探しました。しかし見つかりません。そこへ妻が何かを手にもってこっちへ来ました。そしてプシュッと、ケガをしたところにかけました。ケガをしたところから、いい香りが漂います。
何をするんだ?
ケガをした時に消毒液がなければ香水をかければいいのよ。香水はエタノールだから、殺菌効果もあるし。
手に持っていたもの、それは「香水」だったのです。実際は殺菌効果があるかどうかは所説あるそうですが、 この様に私は「香水」=外出する時に吹きかける良い匂いがするものと、その物に対する「機能」に「固着」していたのです。
スライドの工夫
お客様に「死亡保険」を提案する際、保険の名称に「死亡」とついていることから、お客様にも「機能的固着」が起こっているのです。その結果、「死亡」した際に支払われる保険、というのはいつまでも記憶に残りますが、それ以外の支払い要件が記憶に残りません。
そこで、このお客様の「機能的固着」を解除するにはどうしたらいいのか、それは「質問」をすることです。
今回ご検討いただいている死亡保険は、お亡くなりになった時にはどんな役割を果たすか、ご理解いただけましたか?
死亡保険金が出るんだよね?
では、もし50歳の時、ちょうど上のお子様が高校生の時に、余命6カ月と宣告されたら、この保険はどんな役割を果たすか、お分かりになりますか?
えっ?
ここで「リビングニーズ特約」の説明をします。
「リビングニーズ特約」の役割と、そこで給付されたリビングニーズ特約の給付金によって、どれだけご家族が助かるのか、ということを映像化してお伝えします。
そして次に、
もし45歳の時、事故に遭って両足が動かなくなってしまったら、今のお仕事を続けるのは難しいと思いますし、お子様もまだ小さいです。この保険がどんな役割を果たすか、お分かりになりますか?
分からないなぁ。
ここで「高度障害保険金」の説明をします。
「高度障害保険金」の機能の説明にとどまらず、「高度障害保険金」でその後ご家族がどれだけ助かるのか、そこまで映像化してお伝えします。
さらに、
もし40歳の時に、下のお子様はまだ小学生だと思いますが、ガンにかかったら、この保険は何の役に立つか分かりますか?
???
「ガン」に罹患した場合、保険料が払込免除になる、そんな機能がついている保険も多くあります。そこで、払込免除について、それがどんな機能で、どんなに助かる機能なのかという事を、映像化してお伝えします。
この様に、お客様に質問をしてやり取りをすることで、また、保険の「機能」だけでなく、その「機能」を使うことで、その後のご自身やご家族がどれだけ助かるのか、というのを映像化してお伝えすると、お客様の「記憶」に残り、いざと言う時に本当にお客様の助けとなるのです。
「死亡保険金」は「死亡」した時だけ役に立つものではないということ、お客様の「機能的固着」を払拭するようなプレゼンテーションをする様にしましょう。
生命保険は、お客様から請求がなければ支払われません。万一の時の備えがしっかりとできているのに、知らないがゆえに活用できない、そんなことが起こってはいけません。お客様の記憶にしっかりと残るプレゼンテーションを意識してみてください。