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18.高い保険料でも契約となる!

提示した保険料が、お客様に高いと言われてしまいます。

生命保険のご提案において、お客様の様々なニーズを聞いていると、それを解決するためには、数種類の保険を提案したり、様々な特約をつけたりして、保険料が高くなってしまうことがあります。全部のニーズを叶えようとすると、時には保険料が毎月10万円にものぼってしまう、なんてこともあるのではないでしょうか。

保険料に10万円を支払えるお客様であれば、そのまま契約していただくこともできます。しかし、多くの場合、お客様が「毎月支払う保険料」として考える金額というのは、数万円、高くても恐らく3万円前後ではないでしょうか。ここで、お客様の要望と金額のミスマッチが起こります。

ところがこの3万円という金額は、お客様がただ漠然と「保険料は毎月3万円ぐらいが適切」、と考えているだけで、実際は毎月10万円の保険料を支払える場合もあります。 では、この「保険料は毎月3万円ぐらいが適切」という考えを、どうやって変えてもらったらいいのでしょうか

錨を落とす

それは、私たちが提案する生命保険の「価値」を、お客様に納得いただければいいのです。

そのためには、商品説明をする順番、保険料をお伝えする順番をしっかりと考えて伝えることが大切です。その方法が、「アンカリング効果」です。

アンカリング効果

先に提示された特徴や、価格情報が強く印象に残り、その後の意思決定や判断に影響を及ぼす効果のこと(アンカーとは「錨(いかり)」を意味し、アンカリングとは、船の錨を下げて船をつなぎとめることを意味します)

人は購入を決定する場面において、最初に価値判断の基準を設定し、その後の判断を無意識で調整しています。こちらをご覧ください。

この様なチラシ、よく目にしますよね。本来8万円で売られているものが、55%オフになり、今なら36,000円で購入できますよ!というチラシです。このチラシを見た時、多くの人は「8万円の価値があるものが、36,000円に値下がりしている。なんてお得なんだろう。」と思います。通常価格の「8万円」という金額でアンカー(錨)が落ち、それと値下げ後の価格を比較をすることで、値下げ後の36,000円というのがとてもお得に感じられるわけです。

しかし実際のところ、この商品に80,000円の価値があるのかどうかは分かりません。でも、こう書いてあるとなぜかお得に感じてしまうのです。

通貨の3機能

お金には、次の3つの機能*があります。

* 一般社団法人全国銀行協会「お金の機能とは?」より引用

お金の機能とは? | G.金融経済を学ぶ | 一般社団法人 全国銀行協会 (zenginkyo.or.jp)
① 価値の保存機能
お金の名目価値は変化しません。お金を銀行に預ける、金庫にしまうなどして持ち続けていれば、富を蓄えられます。
② 交換機能(決済機能)
物々交換の経済では、「魚」を持っている人が「肉」を欲しいと思っても、「肉」を持っている人が「魚」を欲しくなければ、交換は成立しません。しかしお金となら、「魚」「肉」を交換(決済)できます。これにより、「魚と肉を交換してもよい」と、両者の欲求が一致する必要はなくなります。お金は交換の媒介としての機能を持っています。
③ 価値の尺度機能
世の中で販売されている食べ物やサービスにはすべて値段がついています。一般的に値段の高い商品やサービスほど、私たちが感じる値打ちも高くなります。例えば寿司1貫100円と、1貫1万円では、後者の価値が高く感じます。このように商品やサービスの値打ち、価値を決める物差しとしての働きがあります。

この3つの機能の中で、「価値の尺度機能」というのが、アンカリング効果と関連します。

例えばここに、「古ぼけた壺」があるとします。私にはその壺の価値がよく分からないので、「これは1万円ぐらいかな」と思いました。ところが、骨董品の価値の分かる人から、「この壺は8,000万円するんです。でも今回、この博物館を閉館することになりました。そこで特別に4,000万円でお売りできますよ。」と言われたらどう思いますか?

私は「なるほど、いつの時代のものか分からないけれども、この壺には8,000万円の価値があるんだ。それが4,000万円とは、お得なのではないだろうか」と感じてしまいます。最初にこの壺は1万円ぐらいじゃないかな、と思っていたにも関わらずです。よって「8,000万円」という価値で一度アンカリングされてしまった、ということです。

この様にアンカリング効果は、人の考え方や価値観にバイアスをかける、非常に強力なテクニックです。

高価で良いものを提案する

それではこれを、生命保険のセールスに応用してみましょう。

冒頭のお客様に対して、お客様のニーズを満たすためには保険料が毎月10万円のご提案になります。しかし、お客様に聞いてみたところ、保険料として支払えるのは毎月3万円程度。ところがこの3万円というのは、「3万円しか支払えない」という金額ではなく、セールスに対する信頼感がそれほどないためなのか、保険というものに支払うべき金額は3万円と漠然と思っているからなのか、根拠がありません。

それならば、セールスに対する信頼が上がれば、もしくは提案と保険料の根拠がしっかりとしていれば、10万円の提案も受け入れていただけるかもしれません。

そこでプレゼンテーションの段階で、まずはお客様のニーズを完全に網羅した一番高級なプランを提案してみましょう。大事なことは、この高級なプランが、お客様にとってそれだけの価値があり、お客様のお役に立てるものなのだ、ということを真剣に考えて提案をすることです。

そうすることで、お客様に「良いものは高いんだ」というアンカリングをすることができ、私たちの提案をしっかりと「価値のあるもの」と理解していただけるでしょう。

それでも「毎月10万円の保険料は支払えない」ということであれば、少しずつ機能を削っていき、8万円、6万円、4万円と保険料を下げていきます。10万円という保険料でアンカリングをしておくことで、当初予定していた3万円よりは高い保険料でご契約をいただける可能性がグッとアップします。

高価で良いものを先に提案する。

ここで大切なのは、最初に高い保険料を提案するといいと言われたからといって、とにかく高い保険料をお見せすればいいというものではありません。20万円とか、30万円の保険料のものを提案したら、反対にお客様から信頼を失ってしまいます。 見せ球として高い保険料の保険を提案するのではなく、お客様のニーズを全て満たした最高のプランを提案してみてください。

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