「お客様と雑談をしてその場の空気は和ませられるのですが、そこから商談に切り出すときの、きっかけトークに苦労します。」
商談の場で、お客様と会って一番初めに何をするかというと、「お客様との距離を縮める」ということをしますよね。そのために効果的なのが「雑談」です。
例えば、今日の天気とか、お客様の身に付けているアクセサリーを褒めたりとか、そんな話しをして、少しでもお客様との距離を縮められる様にすると思います。そしてその場の空気が和やかになったところで、お客様のニーズを確認し、商品を提案するプレゼンテーションに移っていく、この様にセールスのステップを踏んでいくわけですが、初めの雑談から次のニーズ確認に進む場面で、ブツッと話が切れてしまうというケースがよくあります。
それは、雑談をしてせっかくその場の空気が和んだのに、次のニーズを確認する段階に移る時に、「ところで」とか、「ちなみに」というフレーズを使ってしまうからです。ちなみに、この「ちなみに」という言葉、だいたい前の話しとちなんでないですよね。そこで、雑談からスムーズにニーズ確認に移るために「ディドロ効果」を活用します。
もくじ
提案のチャンスを探す
「ディドロ効果」について聞いたことはありますか?18世紀にフランスで活躍した思想家、ドゥニ・ディドロ氏が書いたあるエッセイに由来した効果です。
ディドロ効果
フランスで活躍した思想家 ドゥニ・ディドロ氏が書いたあるエッセイに由来
新しいモノを一つ取り入れると、そのモノに周りを統一させたくなるという効果
エッセイの内容は、こうです。
みすぼらしい書斎の住人で、みすぼらしいガウンを着ていたディドロ氏は、ある日友人から緋色(ひいろ)のガウンをプレゼントしてもらいます。その緋色のガウンを気に入ったディドロ氏は、みすぼらしいガウンを捨ててしまいます。そしてしばらく経つと、書斎に掛けてあるタペストリーが古くなっていて、新しいガウンと調和がとれていない様に感じます。タペストリーを新しいものにすると、今度は椅子の古さが気になります。結局、これまで書斎にあったほとんどの物が新しいガウンと調和していない様に感じ、ほとんどの物を新しくしてしまった。
このエッセイを「所有物の調和を求めて次々とモノを消費してしまう」ことの例えとして、文化人類学者のグラント・マクラッケン氏が「ディドロ効果」と名付けました。
人にはもともと、一貫性を持った行動を取ろうとする性質があります。皆さんもこんな経験はありませんか?
例えば、家を購入して引っ越しをしたら、これまで使っていた家具が新しい家に合っていない様に感じ、新しいダイニングテーブルやソファーが欲しくなったり、新しくランニングシューズを購入したら、ランニングウェアも新しいものにしたくなったり、これがディドロ効果です。
つまり、お客様が何か新しいものを購入していたら、一貫性を持った行動につなげることで新たな提案のチャンスが生まれるということです。
戦略的な雑談
それではこれを、保険セールスに活用してみましょう。
セールスに応用するには、初めの雑談の場面で、ただお客様と仲良くなることだけを考えるのではなく、その後のニーズ確認につながる様な「戦略的な雑談」をします。戦略的な雑談から「ディドロ効果」を使うことで、ニーズ確認や商品のプレゼンにつなげることができるのです。
ではこの、「戦略的な雑談」というのはどうやったらできるのでしょうか? それは、一番最初のアプローチの段階で、「どれだけお客様の事を聞けるか」にかかっています。お客様の事をたくさん聞いて、その後のニーズ確認につながりそうな話題が出たら、そこを掘り下げていきます。特に、お客様が最近購入されたモノについては、それをなぜ購入したのかを聞いていくと、その後のニーズ確認につがる確率が高くなります。
例えば
最近購入されたものはありますか?
カーテンを買い替えたわ。
何か理由があって買い替えたのですか?
緑色にしたんだけど、心を落ち着ける効果があるって聞いたから。
そうなんですか。カーテンを購入すると、カーテンに合わせたスリッパを買い替えたくなる、なんて方がいらっしゃるんですけど、スリッパは購入されないんですか?
といったように、お客様が購入したモノを一緒に想像し、そこに合わせたものを提案することで、「ところで」や「ちなみに」という言葉を使用せずに、ニーズ確認に移行することができます。 生命保険の場合は、例えば次の様な事が聞けたら「ディドロ効果」を使う絶好のチャンスです。
- 家を購入した ⇒ 大きな金額の物を購入後は家計を見直す絶好のタイミング
- 住宅ローンを借り換えた ⇒ 何か大きな変化があった際は家計を見直す絶好のタイミング
- 子どものランドセルを買いに行った ⇒ 子どもの入学等、大きなライフイベントがある際は家計を見直す絶好のタイミング
- 大きな家電を買い替えた ⇒ 古い家電を新しいものにすることで節電が見込めることから、お金の流れについても見直す絶好のタイミング
目的を忘れない
大切なことは、「雑談」を「雑談」で終わらせず、ニーズ確認につながる「戦略的な雑談」を行うことです。
その場の雰囲気を和ませるために、ただひたすらお客様の「雑談」に付き合う人がいますが、セールスの目的は最終的に生命保険をお申込いただくことです。本気の「雑談」をしていても意味がありません。お客様の行動変化を見逃さない様に、始めの段階でお客様の事をたくさんヒアリングして、ニーズ確認につなげられる話題をキャッチしましょう。