「アプローチの段階でお客様にお断りされるのが辛いです…」
アプローチの段階、最初のアポイントを取る段階でお断りされること、多々あると思います。まだ何も話してないのに、「保険会社です」と名乗るだけで拒絶されることもあります。でも、断るならせめて少し話しを聞いてからにしてもらいたいですよね。
もくじ
断らせない交渉術
そこで、アプローチの段階で断られにくくする方法、「フット・イン・ザ・ドア」についてです。
フット・イン・ザ・ドア
一貫性の法則を活用した交渉術
簡単な要求から始めて、徐々に本当の要求をしていく方法
「フット・イン・ザ・ドア」とは、いきなり本当の要求をせずに、簡単な要求から始めていくことを言います。人には「一貫性の法則」という、無意識のうちに態度や行動に一貫性を持たせようとする心理があるので、一度要求にOKしたら次の要求もOKしやすくなるのです。「フット・イン・ザ・ドア」はこれを活用したテクニックです。
例えば夫婦の会話では、この様な感じです。
帰り道のコンビニで、牛乳を買ってきてくれない?
いいよ。
ありがとう!あ、駅の反対側にある酒屋さんで、ワインも買ってきてくれない?
ん-、わかったよ。
ありがとう。ついでにちょっと先にあるケーキ屋さんで、ケーキも買ってきてくれない?
えー、しょうがないなぁ。
妻は、本当はワインとケーキが欲しかったのですが、いきなり帰り道と反対にある店で買い物をしてきてほしいと頼むと、断られると思いました。そこで、まずは帰り道にあるコンビニでの買い物をお願いし、OKしてもらってから、離れた場所での買い物をお願いします。
帰り道にあるコンビニであれば、大抵断られません。この様に、最初に低いハードルを乗り越えてもらい、その後で本題である高いハードルを乗り越えてもらうのが「フット・イン・ザ・ドア」です。
この時大切なのは、最初の低いハードルから、最後の本題まで内容を一貫させることです。この例の場合は、「食べ物」を購入してきてもらうという一貫性があります。
上記交渉は、パートナーにうまく活用されている私にとって、大変目頭が熱くなる光景です。
小さな依頼の効果
こんな実験がありました。
スタンフォード大学の社会心理学者である、ジョナサン・フリードマン氏と、スコット・フレイザー氏が行った実験です。
ジョナサン・フリードマンの実験
街の住人に、「安全運転を心がけましょう!」という看板を家の庭先へ立てさせてくださいとお願いすることにしました。自分の庭先へ看板を立てるわけですから、大きなお願いです。
その際、まずは「窓に交通安全に関するステッカーを貼ってください」とお願いして、OKをもらってから、「看板を庭先へ立てさせてください」とお願いした時と、いきなり「看板を庭先へ立てさせてください」とお願いした時、どちらの方がOKしてもらえたかを調べるという実験です。
結果はもうお分かりですよね。 まずは、小さなお願いである、「窓にステッカーを貼ってもらえませんか」というお願いをした方が、庭先に看板を立てさせてもらえる確率が3倍も高かったのです。
他にもこんな実験がありました。
アメリカの心理学者、スティンプソン氏が女子大生に行った実験です。
スティンプソンの実験
「大学から数マイル*離れた場所まで行き、そこで木を植えてほしい」とお願いすることにしました。
その際、まずは「環境問題に関するアンケート」に答えてもらい、その後「数マイル離れた場所へ行き、木を植えてきてきてください」とお願いした時と、いきなり「数マイル離れた場所へ行き、木を植えてきてください」とお願いした時、どちらの方がOKしてもらえたかというと、もう答えを言うまでもありませんね。
*1マイル≒1.6キロメートル
お願いをされた側にたって考えてみると、どのようなことが起こっているのでしょうか?
人は「小さな依頼を引き受けたら、その後の大きな依頼も聞かなくてはいけない」という暗示がかかっているのだといえます。強力な効果です。
簡単なお願い事を受け入れてもらう
それではセールスに応用してみましょう。
アプローチの段階で、いきなり保険商品の話しをしてしまってはお断りを受けてしまいますよね。もしくは、アポイントを取ろうとしても、保険会社と聞くだけでお断りをされてしまうかもしれません。
そこで、「契約していただかなくて結構ですので、お話しだけさせてください」とか、「まずは名刺をお渡しだけさせてください」といった様に、低いハードルを提案してみてください。そうすることで、「話しぐらいは聞いてもいいかな」とか、「名刺をもらだけなら会ってもいいかな」と、OKをもらいやすくなります。
「フット・イン・ザ・ドア」というのは、低いハードルを乗り越えていただき、そのあと本題である高いハードルを乗り越えていただこうという方法です。この後のトピックスで「ドア・イン・ザ・フェイス」という似た方法について説明しています。
「ドア・イン・ザ・フェイス」というのは、乗り越えられない高いハードルをまずは断っていただき、その後低いハードルを提案して承諾していただくという方法です。どちらを活用するか悩むと思いますが、提案の内容や、お客様の性格によって使い分けてみてください。